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深碧の海の21世紀 長崎 壱岐のクロマグロ自主禁漁と佐渡ヶ島の大発生

  1. 経済
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日本人と海

 

 

– サルビアや砂にしたたる午後の影 –

夏が近づいて、深碧の海に毎日のように心惹かれる日々がやってきた。

去年の夏は川の話、鮎をテーマにした夏の風流を記事にしていたと思う。

 

今年は川から一歩先に進んで海にしようと思うけど、読者の人は海と聞いて何を思い浮かべるだろうか?

俺が海と聞いて真っ先に思い浮かべるのは、脂がのったマイワシと、女の紅い足の裏だ。

 

特に都会で生活している女には、普段ずっと俺が睨めっこしてる鏡凪の静かな海が珍しいんだろう。

池みたいに静かなのに波だけが一人前にやってくる、白い砂浜の波打ち際で足を濡らして戯れていたのを思いだす。

 

まるで桜貝の貝殻のような健康な爪の色に(俺はペディキュアが嫌いだ)血の気が差したピンクの足の裏を見て、陶像のように夏らしいワンピースが似合っている女が実は人間だったことにはっとしたりする。

物音一つしない昼下がり、圧倒的な季節と生き物の気配に耳は聾される。

プライベートビーチのような静かな砂浜で、山から降りてきた湧き水が砂浜から噴き出して、日差しだけが熱く砂を焼いていた。

 

↓の写真は瀬戸内海の離島で釣り船をチャーターした時になんとなく撮影したものだけど、この時期からここらの海ではマイワシが回遊してきて海際で戯れる家族をにぎわせて「いた」

「イワシなら女でも釣れるから」とソワソワする母と港に出掛けて、バケツ一杯マイワシを釣った大昔の遠い思い出は、黒い絨毯のようなあのマイワシの群れと遠くに行ってしまった。

 

現在、瀬戸内海からはマイワシが激減している。

母が祖父と船で出かけていた海遊びの思い出話と地続きだったこの海で歴史が断絶している。

 

皆がこの時期の碧がかった海の中に思い浮かべていたあんな奴やこんな奴はもういない。

アイナメも居なくなって、カレイも何処かへ行った。

スナメリもずいぶん長いこと見かけない。瀬戸内のシイラなんてもはや絶滅しただろう。

 

海も文明開化で、この30年余りで大きく姿を変えている。

 

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マグロの禁漁を始めた長崎、壱岐

 

近頃入り浸りの瀬戸内海に限らず、日本の海は大きく姿を変えた。

 

都市圏は川が生きているために中々体感はしにくいのだろうけど、その変化からは東京湾から壱岐の離れ島まで逃れることはできていないようだ。

東京湾では小魚が激減する一方で小型のサメ(魚食性)が増加して、マンメイドの障害物のおかげで鱸が沸き返りシーバスボートが花盛りだそうだ。

(いつか東京湾で90UPを狙って船で出撃しようと思っている。)

 

そして壱岐ではマグロが居なくなり、ヨコワがなかなか口に入らないものになってしまった。

江戸時代から日本人の口を唸らせてきたあの若い赤身の味もいまは中々手が届かない高級品だ。

 

魚がいない状況が考えられないあの壱岐で禁漁をするなんてよほどのことだろう。

そしてその切迫した状況はやはり資本の論理で破壊されている。

 

まるで田舎のうなぎやナマズ、鮒達を百姓が守り切ることも出来ず工業にもみ潰されてきたように。

 

しかし生態系の激変、魚がいないということで表面化した現象は禁漁という方策だけで対処が出来るのだろうか。

日本人が海を通して直面している問題は案外根深いものなのかもしれない。

 

「巻き網漁船が通ったあとは、海がカラカラになり、しばらく漁ができなくなるのです。せめてヨコワが対馬海峡を通過する5~6月と、日本海から戻ってくる11~12月の操業は勘弁してくれと昨年9月に要望書を出したんです」。対馬市曳縄漁業連絡協議会の梅野萬寿男会長はそう話す。今年、対馬と壱岐の漁業者は、6~7月の産卵期の禁漁を決めた。クロマグロはこの時期、日本海で卵を産む。もちろん収入は減るが資源の持続性を維持するためには仕方ない措置と考えてのことだ。しかし、巻き網漁業の側は、禁漁する気などさらさらない。

 「彼らは無反応なばかりでなく、私たちの仲間が海上に設置しておいた『シイラ漬け』という竹でつくった仕掛けごと巻く事態も発生した。こうした状況が続くようでは、もう私たちはこの島で生活することができなくなると、抗議船を出したんです」

 結局、8月末に日本遠洋旋網(まきあみ)漁業協同組合との話し合いが行われることになったが、あくまで話し合いの場が用意されたに過ぎず、根本的な解決はされていない。

 「魚が大量にいた時代は巻き網漁船が巻いても誰も文句は言わなかった。今はそういう状況じゃない。何もかもやめろとは言っていない。こちらにも生活があるので、せめてこの時期の漁だけは自粛してもらいたいという話だ」(対馬の漁業者・宮﨑義則氏)。

 

via: マグロ急減で漁業者衝突 動かぬ水産庁の不可思議 漁師による海上封鎖に水産庁へのデモ、不買運動まで発生 WEDGE Infinity(ウェッジ)

 

 

対馬、瀬戸内海…一方で突如マグロが登場する処女地が激増

 

壱岐でマグロが居ないと嘆く一方で、大したニュースになってないものの実は各地でマグロが突如出現して騒動を巻き起こしている。

このニュースでは佐渡ヶ島が話題に出ているけど、近頃は瀬戸内海でもクロマグロが出現している。

 

早潮のなか手釣りの仕掛けを操る一本釣り漁師が、ついこの間30kg超えのクロマグロを釣っていた。

鳴門海峡ではクロマグロがジャンプして大暴れ、100kg超えの個体を捕獲した漁師もいるらしい。

 

スナメリやアイナメ・カレイと入れ違いに、熱い海の魚がどこからともなくやってきている。

ゴンズイ、グレ、アイゴと豊後水道以南の珍奇な魚達が空き巣に入居した。

 

衝撃的なことに、この間夜釣りをしている時にとびうおまで発見した。

デカイ鯵だと思って、戯れに手網ですくおうとしたら水面を飛んで逃げて行った。

一体なぜこんなことになったのか?

 

新潟県佐渡沖のクロマグロ漁が最盛期を迎えた。

 佐渡市の鷲崎漁港と黒姫漁港では2、3の両日で300匹以上が水揚げされた。

 内海府漁業生産組合などによると、クロマグロの漁期は5~7月だが、今年は5月の水揚げが少なく、約30匹にとどまっていた。突然の大漁に、同組合鷲崎漁場の明神丸漁労長・本間雅樹さん(66)は「最近は急に大量のクロマグロが来る。海が変わってきているのかもしれない」と話していた。

 

via: 「海変わった」…クロマグロ、新潟沖で突然大漁 : 経済 : 読売新聞(YOMIURI ONLINE)

 

 

日本の海が迎えた近代

 

うなぎを禁漁して放流しても生体数は回復しないだろうと言う見通しと同じように、日本の海を回復させるための問題は根深い。

 

実際のところ、魚の生態系を完全に変えたトドメの一撃は、1980年以降日本中で続いた発電所の新増設ラッシュだろう。

↓の黒い地図に赤い点のものが火力発電所、もう一つが原発だ。

 

これらの施設がこの30年で海を変貌させたのは疑う余地が無い。

放射能やCO2といった問題の前に、こうした設備共通の問題は排水が温かいという一点に絞り込まれる。

つまり、これらが激増した海は30年前より随分暑くなったわけだ。

 

生態系が水温の上昇でどう変わるか。

特に関東や中日本、南四国の海の人は信じられないかもしれないけど、近頃の内海や港湾に発電所の大きいのがある海では、バチ抜けが起きない。

 

釣りをしない人には馴染みのないこの言葉、バチ抜けというゴカイの産卵を指している。

バチ抜けのシーズンには水銀灯の下でゴカイや大虫が集まって盛大な産卵ショーを繰り広げて、それを狙った魚で海が沸騰して「いた」。

 

それまでの間、冬の寒さをしのぎ産卵するために、黒鯛、鱸、真鯛などは沖の深場に移動して岸は静寂を迎えている。

3月の半ばから徐々に始まるバチ抜けが春の到来を告げて魚の大移動を予言していたわけだ。

 

今はその時期になっても内海は静かなまま、生命反応は感じられない状態。戻ってくるのは6月に差し掛かる頃になっている。

個人的なフィールドワークの結果にすぎないけど、船を雇ってあちこちで実釣した結果、戻ってくるはずの魚達は火力発電所の排水口海域で寒さをしのいでいるようだ。

 

そしてバチの産卵も海水温変化のせいか時期が集中しなくなっているし、魚も同じように産卵の時期は分散してしまった。

自分で魚をさばく殆どの人は体感してるんじゃないか。

真鯛が今の時期でも真子や白子を持っているのは本当はおかしい。

 

こうした生物の保護で日本ではすぐに捕獲の禁止を叫んで何かしたつもりになっている。

が、ここ20年30年、その訴えの成果が出ていないからこうなったんじゃないだろうか。

勿論大手の水産会社や、そうせずには生きられない漁師の乱獲は大きな問題だろう。

 

しかし生物の保護で欠かせないのは、生息環境の保護と、種目総数維持のために必要なカロリーの計算だ。

 

下水道の普及で海は深刻なカロリーとリン酸不足に見舞われている。

沖合に汚穢船が糞尿を捨てていた時代、確かに汚い気はするものの海は海藻に満ち溢れ、砂浜では足で砂を巻くだけであさりがうんざりするほど取れていた。

魚も海から飛び出すほど居て、馬鹿や下手くそでも大物にチャレンジできていた。

 

今、海藻が激減した海岸線では、海藻の根に守られなくなった砂が波で巻きかえり海を濁している。

 

河口に水が無いのが当たり前になった時代、網で掬えるほど湧いていたハゼは見なくなって、車海老が珍奇な海老になってしまった。

(エビごとき、運動神経のいいやつなら懐中電灯持って胸まで海に浸かれば魚籠一杯捕まえるのなんか一昔前はすぐだった。)

 

火力発電所の新増設ラッシュが始まって数年で瀬戸内海からはマイワシが激減した。

時を同じくしてスナメリ、アイナメ、カレイは幻の魚になった。

 

禁漁も大事かもしれないけど、壱岐で声を上げた彼らが見ている点の向こうには大きな問題があるはずだ。

 

目の前の同じ海で、何百年も前から同じ魚をテーマにして語り継がれてきた優しい物語は今静かに断絶している。

どうしたらそれが解決するのか?

 

日に日に強くなる日差しを照り返す深碧の海の誘いにのって、みんなが少しずつ足を向けて、語り継がれてきた海からの物語を思い返せばあるいは。

 

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gundari水温上昇について梨さん Recent comment authors
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梨さん
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梨さん

さかなクンが他の湖で絶滅して無かったのを発見したクニマスの話と理論は同じですね。
水俣病も人が有毒水銀で病気になった以前の
震源地の魚すらも根絶やし状態から獲れる状態に戻るまでに四半世紀ですし

地元の為やお国の為と言い出して反対意見を黙殺する人間が出てくる案件は
大概こうなるジンクスは本当に何なのでしょう

梨さん
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梨さん

>建てる人達は水温上昇するということそのものに気が付かなかったのでしょうし、懸念を呈した人に「対案はないのか」と迫ったのでしょう。
対案出せを主張したとしても御用学者のお手盛りの数値を羅列して強行したでしょうから
危険性や悪影響を軽く見ているか無いと判断して動いてる相手に議論は無理ですね
かくして環境よりコストで大惨事となる訳で

迦陵頻伽
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迦陵頻伽

本当に海とか海の幸とかの話になると美味しそうな記事を書きますね(主旨が違いますが)あぁ魚の刺身が食べたくなってくる^〜

水温上昇について
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水温上昇について

カレイやメバル、アイナメ、マイワシなどの魚が瀬戸内海付近からいなくなったのは、水温上昇による南限の上昇と生息域を変えているからですね
沿岸にいて、水温上昇に耐えられなくなり、沖に出てしまっています(釣れてます)
逆に高温に強いハタ類やイカなどが沿岸に増えている状況です

瀬戸内だけでなく付近の日本海側、太平洋側ともに、夏場の沿岸水温が急激に上昇しており海藻すら生きられず、本当に煮えて腐ってしまっている状況です

原因としては地球の温暖化による海水温上昇(熱伝導効率に優れたものにカロリーが蓄積するため)と、それに伴う海流の蛇行、温海水塊の移動によるものです
台風の大型化、気候の変化などもその一環で、観測史上初2年連続のエルニーニョなどはその影響の一端です
発電の温排水は局所的なもので、カロリーの問題では地球規模の温暖化と比べる以前の話ですが、冬場は暖かくて魚が集まるためよく釣れます(笑

魚(というか地球)を元に戻すには車と工場による温室効果ガスの削減がトップで、発電関係は再生エネルギー関連の技術革新が起こらなければ、火力を停止して原発に切り替えつつ、省エネしていくことでしょうね
高速増殖炉の実現、高効率再生可能エネルギーの確立などが課題かと思われます