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「読者目線」というクソ思想 転落して当たり前の売上、バカ目線に成り下がった出版業

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読む→見るの変化 「読みたい人」を掘り起こせ

 

前項までの現象に通底しているのが(いまや出版社側もそうなりつつあるのかもしれないけど)、「読む」という頭脳作業が「見る」という神経反射に切り替えられ始めたということなんだろう。

健全なコンテンツのサイクルが失われたという指摘は前項でもしているけど、今までの時代で特徴的なのは、その断絶をゲームとアニメが埋め合わせてきたことだ。

 

頭脳作業と見かけだけ類似した神経反射的な行為を続けた結果、神経反射と頭脳作業の区別がつかなくなったのが「読者視点」の向こう側の現実と言って差支えがないだろう。

 

こうした現実を物語っているのがうちのコメント欄で、見たくないものがそこにあるということが耐えられない二次元脳が日本に蔓延している。

過去の歴史を記した書籍でも、見たくない歴史は何者にも書き換えられることなく厳然としてそこにある。

 

どんなに武田信玄が好きで彼の天下統一を待望しても、現実の歴史の中ではやっぱり彼は非業の死を遂げるし、信長の神秘的な部分に惹かれても彼は本能寺の炎の中で灰になる。

竜馬がゆくを読んで、知っているはずなのに龍馬の死に涙した人も少なくないはず。残り少ないページが彼が居なくなってもまわり続ける世の無常と、残されたものの虚を描写していた。

つまり読むという作業を通じてそういったストレスに耐える練習を受けてない奴が増えているということだ。

 

行き着く先が「読みたい」読者に対して「見たい」人向けのクソアイテムを発表することになって売上は凋落する。

そして台所事情は苦しくなり、本当は抱えておいた方がいい作家を食わせられなくなる。

結果的に作家は出版ビジネスから離れて、そのうちブログか有料コンテンツで飯を食うようになるってわけだ。(あるいはフリーターか。)

 

WEBメディアがそうして台頭する現状で、広告単価は現状に追い付いていないためWEBメディアは出版の代理になれてない。

つまり、本を1万部売ればとりあえず売上は何百万円かにはなるはずなのに、サイトで1万PV 集めてもせいぜい数万円がいいところだってこと。

 

その現状は書き手のレベルの低下や、コンテンツの質の低下という悪循環を生み出していて、「口コミ」は発達するけど「アンテナ」になりうる作家側に該当する人は不在と言ってもWEBの不毛を惹起している。

 

やっぱり十年単位の挑戦にはなるのだろうけど、出版社が心を入れ替えて原点に立ち返るほうが有望な気がする。

「今の子」に「今までなかった何か」を見せて目を釘付けにするスターを生み出す努力をするべきなんじゃないか。

当然活字にしたって、昔の津本陽とか、エッセイで言えば椎名誠みたいな人を探しだして発信する側の位置を取り戻すべきだ。

 

ぼくはこう考えたんです。まず、WebニュースやWeb媒体における報道においては、依然としてネットの世界のなかだけで流通している言葉と事象のみで、つまり取材という行為を省略したかたちで記事を提供している現状がある。その点、既存のノンフィクションには意義・意味があり、紙媒体の将来性も決して失われていない、というような返答をしました。すると、会場から拍手の音が聞こえたんです。その音を電話口で聞いていて、すごく気持ちよかった。ぼくが言ったことを受け止めてくれる、賛同してくれている。あの場にいたみなさんの気持ちを掴んだという、ある種自己陶酔に似た気持ちがありました。

ところが、しばらく時間が経つと、この気持ちよさってなんだろうと冷静に考え始めるわけです。それは”弱小政党の総決起集会”にも似たようなことだと思いました。「まだわれわれの存在意義はある! がんばろう!」とみんなで拳を振り上げるようなことは、ぼくがこれまで何度も取材で見てきた弱小政党やマイナー集団の総決起集会の悲惨さとダブったんです。つまり、ぼくの気持ちよさは、世間から見たら最大公約数にもなっていない、少数者の悲哀のなかでがんばろうとしているような気持ちだったんです。

しかし、インナーサークルのなかで拳を上げてもなんの解決にもなりません。活字にはまだ力がある、紙メディアには意義や意味がある、ノンフィクションにはまだ意味が失われていないことを確認する作業はできても、解決策を見つけることができない。そんな怒りや苛立ち、そして悲しみが入り混じった気持ちは次第に強くなっていきました。

 

via: 「取材をしないネットメディアには、匂いや身体性がない」 安田浩一×佐藤慶一対談「ノンフィクション・メディアの意義・課題・希望」【前編】  | G2 ノンフィクション | 現代ビジネス [講談社]

 

 

「何でもあり」から卒業して原点に立ち返れ

 

前述までの通り、出版の凋落は

 

・既存コンテンツの使い回しという安全牌

・ボリュームゾーンの年齢層という確実性に逃げ込んだ逃げの戦略

・目先の経費削減と売上確保という焼畑農業

・読者目線、お客様視点という妄想

 

で引き起こされた。

 

目先の経費削減のしわ寄せは作家に直撃して、カップラーメンしか食ってない作家に毎日しゃぶしゃぶとか食ってるような出版社の社員という構造が現実になった。

そんな仕組みの世界で作家が金の卵を生み続けるかどうか考えたら馬鹿でも矛盾に気づくはずなのに。

 

落ち始めた売上をごまかすために、大卒のやつが口先三寸で2chとアマゾンの読者の声を分析して、目先の売上に逃げる。

そしてその成果物は何でもありの汚さをこねくり回したクソだった。

 

出版というものの原点に立ち返ったら、やはり世界最古の印刷物百万塔陀羅尼や聖書に行き当たるんだろう。

それはなんでもありとは正反対の方向を感じさせる、「みんな」とか「お客様」を超越した発信する意思の産物といえる。

 

出版が既存の勢いを取り戻すために一番必要なのは、何でもありからの脱却のはずだ。

 

今本から離れているたくさんの読者は、「読んで面白い本や興味があるテーマがない」ことで離れているわけだし、次々に発売されるクソを見て出版自体に懐疑的な意識を持ち始めている。

それは目が肥えた読者はみんなとは違うことを面白いと感じるという証拠だし、幅広い視野で捉えられなかった何かで驚きたいという知的好奇心を持っているってことだ。

 

そして今までの長い時代、そうした人々が内心で共有した感動が社会現象や大きなブームを生み出して出版社に巨万の富をもたらせた。

赤字を覚悟しなきゃいけないかもしれないけど、光るものを持っている作者を囲い込んで、編集者が二人三脚で必死で産みの苦しみに耐えることでしか知的飢えは癒せない。

 

沢山の今まで出版された本が、多くの人の人生に彩りを添えて、数えきれない感動を伝えてきた。

百万塔陀羅尼や聖書の出版物を見た人々何を感じたんだろうか?

それが原点のはずだ。

 

古の歴史と格調の高さを感じさせるそうしたものから、少なくとも俺は福音を感じるけど。

 

 

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世界最古の印刷物が百万塔陀羅尼、西洋世界では聖書だった。

 

「世界文学全集」は異例の40万部売り上げ

 河出書房新社は昨年11月から「日本文学全集」(全30巻)の刊行を開始。晶文社は「吉本隆明全集」(全38巻)を刊行中だ。文芸春秋は昨年9月に「丸谷才一全集」(全12巻)を完結し、中央公論新社からは「谷崎潤一郎全集」(全26巻)の刊行が今年5月に没後50年を機に始まる。

 出版物の統計調査などを行う「出版科学研究所」(東京都新宿区)によると、平成2~14年にかけて3巻立て以上の全集本の刊行数は年間50点前後だった。その後、活字離れの影響などを受けて23年には18点まで落ち込んだが、24年には23点、25年には35点と近年再び増えつつある。

 23年に完結した河出書房新社の「世界文学全集」(全30巻)は近年の全集本として異例の計40万部を売り上げた。続く日本文学全集は、文芸単行本の初版部数が4千~5千部という例が多い中、第1回配本の「古事記」は初版2万5千部、2月初旬までに版を重ね5万部が売れた。

via: 【話題の肝】出版不況の逆風でも「世界文学全集」40万部売り上げの驚異 「より深く考えるコンテンツを」編集と読者が一致、「全集」活況の興味深い背景(1/3ページ) – 産経ニュース

 

 

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歓喜天gundari熱斗茶浴 Recent comment authors
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熱斗茶浴
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熱斗茶浴

工数がかかりますが、学術書の準漫画化などはどうでしょう。
今出ている類似品は手抜きしすぎて効果がないですけど。完成度を高めれば国力の増大に寄与すると思います。
洋書だと独習が前提になっていたりして詳細な記述なんですが、日本の学術書は講義で使うレジュメみたいなもんなので中身がとにかく不親切です。
もちろん、軌道に乗れるまで投資が続くかという問題はあります。

歓喜天
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歓喜天

紙書籍の損益分岐点は7千部程度と聞きます。出版社はそれなりのヤツを採用しているはずなんですが、どうしてうまくいかないんでしょうかね。本屋・コンビニでよく見かけるのがダイエット本(糖質制限・ちょっとした食事)と子供狙い?の妖怪百科。前者にはとんちんかんなものが多く(下手すると健康を損ねる)、後者は一冊読めば中身はどれも同じ。特に後者だが、決して小遣いが多いとは言えない子供(=未来のお客様候補)に出版への幻滅を与えかねない。
どんな商売も栄枯盛衰あるんでしょうが、紙出版社は淘汰されるのでしょうか。7千部以上の購買力があるならアマゾンの電子書籍のほうが書き手にはいいでしょうし。