自転車操業の哲学・負け犬、落ち目の闘い方


追いつめられた人は希望で殺される

 

下手な希望を持っても問題が解決しないのはなぜなのか?

そもそも追い詰められた人は判断の基準とか物事の筋書きが狂ってからというのは解説した。

 

典型例は大坂の陣じゃなかろうか。

追い詰められた豊臣方の冬の陣での希望は、「和議による地位の是正」だったことに絞り込まれる。

 

状況的には、徳川に対抗できる力を保てていた最後のタイミングだったし、そもそも戦争をふっかけてこられて事実包囲されてる状況で、和議によって物事が解決するはずがないという当たり前のことが、和議という希望によって判断できなかった。

(狂った判断力が、無傷の解決による威勢の増大という起こりえない絵空事に惑わされた。)

 

力は拮抗して、仮に会戦で多少痛い目にあっても鉄壁の城にこもって体勢を立て直す余力はいくらでもあったにも関わらず、血路を開かずに和議に走った。

判断能力は追いつめられたら追いつめられるほど狂っていく。

夏の陣では、和議にしか助命の可能性が残されていなかったのに、逆に決戦に望みを繋いで灰になって死んでいった。

 

会社の自転車操業で言えば、そもそも資金繰りで追い込まれているのに新商品の販売に金を突っ込んでもダメなわけだ。

そこまで追い込まれる前に術を尽くした上でかかるべき勝負を、なんとかなるかもしれないという曖昧な希望に託してずるずるタイミングを見送って、追い詰められた挙句に「○○は売れるはずだ」と開き直る。

 

甘い希望には百害あって一利なし。

 

「今こんなに弱ってる俺を優しいおねーちゃんなら可哀想だと思っちゃうかも?」

思わない。

そんな可能性があるならそれは今まででとっくに実現していた。

 

ポジティブシンキングはありとあらゆる人の人生計画を破壊する決定的な毒を内包している。

なぜ希望に満ちた優しい世の中があなたを苦境に追い詰めるのか?

それは世の中にそこまで沢山の希望なんかないし、思ってるほど優しくなかったという真実を物語っている。

 

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ではどうやって苦境・自転車操業を解決すんの?

 

基本的に、苦境という病は待つことが最も有効な治療方法だ。

潮の干満と同じように、個人の器量を超えているエネルギーの満ち干きはたかが一個人の主体的動きによって影響を与えられるほど甘くはないわけだ。

 

追いつめられた人がどれだけ甘い希望を持とうと、基本的には周囲にそれらしい希望の種がないから苦境に陥っている。

しかも自分を変えるための行動をする金や時間、気力はそこまでですり減らしている。

 

だとしたら周囲の環境が変わるまで傷を負わずに「生きる」ことこそが肝心で、死なずに機を待つのが苦境の打開の最も確実な方法なわけだ。

 

同じようにライフハックを取り上げた記事で再三、変に努力しないのが大事だと指摘しているけど、事を起こしてからもっとも重要な仕事は「待つこと」の一点に集約される。

(追い風が吹いて主体的に動くべき期間なんてのはかなり限られている。)

それらの記事に書いているように、落ち目の負け犬の自分を否定せずに生きるすべを身につけなければ待つ事はなかなか出来ない。

 

例えば、資金繰りの自転車操業。

営業的努力は大抵の場合ダメだとすでに述べたけど、だとしたら問題は金融面での解決しか図れないわけだ。

 

出資を受ける、借り入れを一本化したり組み替えたり。

で、これも追い詰められた状況で何をやったところで、「潰れそうなので運転資金出資して」と言われて出す馬鹿は居ないし、「潰れそうだから融資組み替えてよ」と言われてハイそうですかという銀行員は仮にいたとしてもそんな決済権は大概持ち合わせていない。

 

つまり、逼迫した状況下で毎日押し寄せてくる地獄といつ終わるともしれない闘いを、正常な自我を保ったまま切り抜け続けるという煉獄のような日常が待ち受けている。

一日千秋、いつ変わるか皆目不透明な世の中の変化以外に希望がないことをしっかり認識した地獄の日々だ。

 

待つことで生き延びることにさえ成功したら、いつかやってくる機に借入残高は減少して、運良く世の中の風潮が変わればファンダメンタルも変わってる。

何より、苦境に対しての認識が変わることで、あなたの物事に対しての対処スキルは飛躍的に向上している。

そしてそれを世間では実力の向上と認識する。

 

機を待つために気力を維持する暮らしを覚えて、甘い希望より目の前の地獄とにらめっこする根性がついたら、人は今までと違う人間になっている。

そして当然別人である以上それまでとはまた違ったステージの世界が開けているわけだ。

 

人間関係や生活にしても同じことで、人間関係の離合や仕事の転職を繰り返すことを良しとしてる風潮そのものの是非にちょっと疑問を覚えてしまうし、なんでもポジティブに考えようというライフハックが蔓延して、転落してしまった今の社会を見る限りではそれは間違いではないかと判断せざるを得ない。

 

石の上にも三年、なんていう諺があるけど、昔の人が処世術として出した結論は21世紀の現在でも普遍的な解なのだと認識するべきじゃなかろうか。

周囲でチャリンコ操業の人や、苦境に陥った人が増えた現在、甘い希望に満ち満ちた虚ろな話を聞きたくもないのに聞かされる機会が増えている。

 

地獄とにらめっこする根性がない人に引導を渡す覚悟がないからリアルでは黙って聞いているものの、この記事を読んだ人が苦境に陥った時は、何が書いてあったかふと思い出して欲しいと思う。

待つ、ひたすら。怪我をした動物が傷を舐めながら穴にこもるかのように。

 

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コメント

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  • コメント (14)

  1. 厳しいですねえ・・・。
    人間は無為には中々耐えられません。
    また、ゆで蛙になるくらいならいっそ抜けだせという議論だってありえます。
    もちろんそのときのステージによって対応を変える、という話なのでしょうが
    それこそ煮られた頭で正常な判断が出来るものか…。

    特に私を含めてせっかちな人間には、ただ待つという行動は苦痛そのものだったりします。
    そういった行動で自分を磨け、ということなんでしょうが…。

    • 法爾無名
    • 2016年 4月 04日

    「待つこと」とありましたが、私が寺の仕事などで、
    特に80を過ぎてまだ現役のお年寄りの方などとお話する時、
    (たまに軍荼利さんに学んだことを話すと喜んでもらえたりしますw)
    やはり苦境の時の忍耐が大きく話題に上りますね。
    昔の死と常に同居していた世代の方は特に強いです。人にもよりますが。
    「人間なんて生かされてるものだ」という動かしがたい観念があって、
    自分たちの分限をよく知っているせいか、これも修行だ、と
    鷹揚にかまえられていたりしています。
    忍耐とは現実を誠実に受け入れ、いただくために必要なことだ、と。
    そしてこういう人ほど仏教を大事にする。

    今世間で断捨離とか足るを知るとかいう言葉が持て囃されていますけど、
    当時は仏教の、全てのものは刹那ごとに生滅し、
    とどまれるものは何一つない、という刹那滅の教えが、
    今とは比べ物にならないくらい実感を伴っていたのでしょうね。

    どうも(自分も含めてですが)
    好景気の上昇気流の中で育ってきた世代というのは、
    苦境を苦境と認められない性質があるように感じています。
    一般化したらいけないかもしれませんが。
    苦しみ悩んだりあわてたりしている弱い自分の姿を拒絶している所がありますね。
    何かあって浮足立った時は、無理に心を抑えようとせず、
    あわてるだけあわてた後、落ち着いてから初めて動けばいいと、
    最近は思っています。

    • 名無し
    • 2016年 4月 05日

    本当に為になる。
    待つこと、これが一番難しい。

    • 去年大学中退の俺氏。涙。
    • 2016年 4月 05日

    まあ、地元のスーパーか、コストコで
    働いていこうと思っています。

    ————————————————————————————
    それと話は、変わりますが、2015年1月30日に軍荼利さんが、UPされた
    『スカイマーク民事再生法申請、プレパッケージ型再生に失敗
    ”航空業界の拓銀事件”に学ぶ景気の転換点 2015年~の経営手法に変化必要』

    という記事の、コメント欄の中で、軍荼利さんのコメントが、一部消えてしまっているのですが、
    どのような事が書かれていましたっけ?よろしければ、教えてください。
    (確か、営業車に乗っているドライバーの顔がアホ面、云々。だったような。)

    ずっと、気になっていまして。大分、昔の記事ですみません。

    • gundari
    • 2016年 4月 05日

    @去年大学中退の俺氏。涙。

    今からの時代、就職するなら不人気の枯れた古い企業が一番の狙い目だって趣旨でした。

    目立たない裏方で、かつ皆が必ず使っているもの。
    そういうのはコンビニ冷蔵庫、自転車のタイヤ、店舗の電飾、厨房機器、売り物の紙箱、こうしたものの隅っこで、小さなロゴで目立たない自己主張をしています。

    ベンチャー企業への就職のリスクは一昔前より跳ね上がってます。
    雇われていくらか楽をしたいなら、というやつです。

    大学中退でも、中小の企業で割りきったら行けるところはそれなりにあるかもしれませんよ。
    スーパーやコストコは必ずダメになります。
    今から20年で、試算レベルで人口が3割くらい減る自治体の山、消えてなくなります。
    医者も食えなくなるし、ガス屋とかもダメになる。
    電力会社だってリストラするかもしれない。

    私は第一次産業が堅いと思いますねぇ。
    あと、不動産。

    試算が3割ってことは、下手したら半減ってことですから。
    消えてなくなるものは静かに見送ってあげましょう。当事者になったら悲惨ですよ。

    • 梨さん
    • 2016年 4月 05日

    神奈川では一昔前にアリック日進と言うチェーン家電屋があり
    今では1店舗プラス駐車場経営の個人商店となったのですが
    管理人さんの主張通りに余計な事をしなかった為に自転車操業での倒産は免れました
    一発当てようとしていたら会社更生法まっしぐらだったでしょう

    • gundari
    • 2016年 4月 05日

    @梨さん

    昔は家電販売も地方の大型チェーンがありましたね。
    首尾よく大手に会社を身売りした会社は賢かったです。

    財務的アプローチでの問題解消=会社売却
    営業的アプローチでの問題解消=大手との対抗

    あれもこの記事で言う路線の結果の一類型だと思います。

    @[email protected] さん

    >そういった行動で自分を磨け、ということなんでしょうが…。

    磨くという積極的な自己啓発より、「どの時点までなら死なずに済むか」という検証ですね。
    限界点を知らないからこそ、恐怖に駆られて動き出すわけですし、知らないからこそ手遅れの状態でわざわざ寿命を縮める自殺行為に出るのが人間です。
    必死で目を背けている「覆しようのない終わり」を日頃から色んなパターンを推測して理解しておくことが大事なんです。

    わかってさえいれば、限界の手前までは静かに時を待てますし、わかっていたら死ぬ前に撤退するという判断が出来ます。
    しかしそれが簡単ではないのはその通りだと思います。
    溺れながらも助けてくれと言えないのが人間です。

    希望的観測の排除は難行です。

    @法爾無名 さん

    >苦しみ悩んだりあわてたりしている弱い自分の姿を拒絶している所がありますね。

    なにより押されて負け犬、惨めになった自分の姿に耐えられないんですよ。
    勝ちばかりが戦じゃないと思ってたら流せるんですけどね。
    実際、あの信長公でも局地戦では負け戦の積み重ねで、撤退の素早さが売りだったのに、日本人は信長公を常勝将軍と思ってしまった。

    肝心なのは負けた時の負け方なんです。
    死ぬ前に負けられたら、負けたけど負けてない事になるんです。

    • バンバン
    • 2016年 4月 05日

    こんにちわいつも拝読させていただき
    勉強させていただいております。
    下記の内容ですが

    >私は第一次産業が堅いと思いますねぇ。
    あと、不動産。

    人口減に不動産?

    売買も賃貸も投資物件も人がいなくなるのに大丈夫なのでしょうか?

    • gundari
    • 2016年 4月 05日

    @バンバン さん

    人が減っても、集中する人口は仲介の必要な物件と入居者を必ず産みます。
    規模が縮小しても業界は消えません。

    バブルが崩壊して土地が7分の1以下になった日本で相変わらず営業してる現在がそれを証明してます。

    • 去年大学中退の俺氏。泪。
    • 2016年 4月 06日

    軍荼利さん、お返事ありがとうございました。

    • バンバン
    • 2016年 4月 06日

    軍荼利さん ご回答ありがとうございます
    よくわかりました ありがとうございました

    • 再読君
    • 2016年 5月 13日

    深くとても重みのある記事で参考になりました。
    ところで、軍茶利さんは、人生で「自転車操業」状態になったことはございますか?

    • gundari
    • 2016年 5月 13日

    @再読君 さん

    私も含めて多くの人が人生、自転車操業を反復的に経験するものです。
    苦境に陥るのも茶飯事です。

    • 迦陵頻伽
    • 2016年 11月 14日

    都市部はそうなんだろうけれど
    田舎では既に土地を手放したい奴ばっかりで、買う奴なんてほとんどいない
    不動産屋が次々潰れて貸しビルになっている。無論誰も借りない

    今は都市部の業者が入ってきて姥捨てもとい老人ホームをがんがん建てているけど
    人口がどんどん減るんだから追加される老人もどんどん減る
    高度成長期に労働者を住まわす為に作った大量の団地が今や廃墟になっているように
    いずれ老人ビジネスの残骸も廃墟となる

    地方の市街地はいずれ軍艦島やpripyatのような言わば死骸地になるのだ
    無人となった土地に原発だけが稼動する風景を見る前に俺は老いて死ぬ。それだけが救いだな

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