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変容する商品経済 EVメーカーに勝者はいるのか?

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2025年のASEAN

 

2025年あけましておめでとうございます。
喪中につき本当はあけおめはだめなのだけど、故人はそういう事に頓着しない女傑だったのでまぁいいだろう。
女であるにも関わらずただ一人俺の手作りの花束を贈られてない彼の人の墓前に、晴れた暖かい日に花束を持参して弔わなければならない。

最近仕事半分でベトナムに行ってきて、特にASEANの経済を分析しているんだけど、現地で確か12月の2週目くらいだったか「日本のEVシフト進めてた自動車メーカー多分死ぬね」と言ってたらいきなり日産が昇天してこの記事を書くに至った。
どうやら一般的な認識を超えた現象が新興市場で起こり始めている。

そもそもの出張(旅行というか。)の動機は、外国人労働者の流入についての話で、

・今後どれくらいそれが見通せるか
・彼らは地元でどんな暮らしをしてるのか
・民族と風土

を観察に行っていた。
今の仕事のメインテーマの一つがすり減っていく地方都市の人口問題なのだ。

面として減少する人口を、局地的にでいいから打開しない限りドメスティックな企業は存続を図れない。
これは当然の理屈であって、その解決には労働力の流入をファイアスターターにする他ない。
(私が自分の会社を率いてた頃とは全く理屈の違う事を1年やってみたけど、おそらく日本中で凄惨な事になるだろうと実感している。おそらく宋の一回目の滅亡の時のように)

どうもASEANでもインドネシア、フィリピンを除いて人口増加率は鈍化し始めているし、晩婚化がベトナムでは顕著だった。
無学な個人が流入する産業形態としては観光と飲食といった、まるで東京みたいなどうでもいい形態の産業が中心で、人口分布の大多数に大した上がり目がない国の形態であった。
受け入れ環境が整った都市にとって、ベトナム・ASEANは流入人口の出元として引き続きある程度期待できるだろう。

ひと頃のベトナムでの日本語ブームの余波で、相当優秀な大学生でも日本語を専攻した結果行く先を無くしている若者が多く、今後の幹部社員の採用先としてはブルーオーシャンだと思う。
仮に偏差値が同じだったとしても、冒険と学びを知らない日本人の普通の大学生より、ベトナム人の方が(こちら側の体制さえ整っていれば)面白みがあると思った。
特に日本に留学している若者たちについては、海を渡る勇気が備わっているという時点で国籍問わず二重丸つけていいんじゃないか。

考えていることが就職なのか人生の打開なのか、これは動機として大きな違いだと見ていいと思う。

もう一つ。マルチリンガルの持つ大きな特徴は、座学や書見で学んだ知識を即実戦使用できる可能性が高いって事である。
その才能こそが、習っただけの言葉をしゃべって意思疎通するという大きな成功体験の副産物なのだ。

ともかく、コロナ以来の海外ではそれなりに学びの多い経験になった。

 

 

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VIN総帥 ファム・ニャット・ブオン氏

 

EV市場の行方

 

ベトナムについてから、カフェから大通りを観察していて真っ先に目につくことと言えば、車メーカーで天下を取っている会社がほとんどない事である。
四輪の車がバラバラすぎて、博覧会みたいになっている。
これといってメジャーシェアを制圧してるといえる車のロゴがないのである。

それでもエンジン車の時代は、例えば上海だとVW以外だと日本車が強いとか、そういう偏りははっきりと可視化されていた。
時代的に先進国の自動車メーカー以外に信頼性がなかったからだし、そもそも製造するための参入障壁が高かったのだろう。

今のベトナムの路上で走っている車を、ありがちな順に記載(☆がEV)していくと
・三菱 ・ホンダ ・マツダ ・ISUZU ・TOYOTA(少な目) ・日産(極少) ・ベトナム国産☆ ・ヒュンダイ☆ ・中華系☆ ・TSLA☆ ・アメリカ系(極少) ・欧州系(極少)

こんな感じである。実際にシェアを見てみると、日本車で5-12%である。
これを車を買う人が先進国の1/4くらいしか居なさそうな地域で(要するに北米で7%のシェアと新興国で7%では全然意味が違う)ディーラー展開して上記のメーカーがガチンコで殴り合いながらEVの開発費用を投下しようというのだ。
正気の沙汰じゃなさ過ぎて目が潰れそうになってしまう・・・・

仮にテスラが大金持ちの会社だとして、地球上の各地域に分散して展開したとする。
そこで上述のような激戦地で各社とガチンコで殴り合った時に、勝つのがどこになるか?
例えばベトナム国産とはVINグループのVIN FASTを意味している。
ベトナム最大というコングロマリットの、EV部門がベトナムの少なくないシェアを握っている。
しかも規模を活用したシェア獲得とも言いにくい取り方をしている。なぜならVINの傘下企業のタクシー会社で普通にヒュンダイを使っていたり、明らかにグループ押し売りに依存しているだけとは言えないからだ。

世界中に分散して投資しているテスラの「一部」と、ベトナムの地域密着でそこに全力投球できるVINグループの一騎打ちで、テスラが勝つという公算は立ち難いのではないか。
つまり今迄みたいに先進国が自動的に勝つという降ってくる勝ちを見通すのが無理な時代になってしまっているのだ。
きわめて当たり前に考えたときに、中国ではXiaomiとかBYD、ベトナムではVIN、ASEAN各地でドメスティックな企業の勝ち筋が見えている。

日本でいえば被雇用者総数の大体1割、アメリカでいえば7%弱の被雇用者を擁する産業の地盤が弱体化していくことが既に確定し始めていると見た方がいいだろう。
つまり、工業的な意味合いで参入障壁が高かった産業は、半導体・ソフトウェア依存が高まるにつれそれが陳腐化していき、雇用や経済が完成品輸出に依存していた国から順番に基盤が腐っていくことを意味している。

車のEV化は鉄、その品質に依存していた部品の製造に特化していた国を殺すのだろう。そしてそれは日本である。
一方で、EV化はバッテリーや液晶、半導体、通信部品の需要を増大させる。
その製造を日本はASEANと中国、韓国、台湾にアウトソースしてきた。この時代の勝者は彼らになるのだろう。

商品経済における完成品輸出は完全に死に体になるだろう。
これからは部品とデータ、金ばかりが海を渡る時代になる。早い段階でITと金融で覇権を目論んだ国は賢明だった。
旧時代の産業から転換を拒み続けた国は大やけどすると思う。それがどこなのかは言うまでもないのではないか。

勝った国は落ちぶれる国やまだこれからの国で女を買う。日本では大久保公園の立ちんぼから道後のソープランドまでみんな外国語対応している。
中国語、韓国語、広東語、スペイン語、ポルトガル語、英語である。その内ベトナム語とタイ語も加わるのではないか。

 

先進国で衰退する工業力

 

この変化は製造業にしがみついてきた日本に決定的な打撃を与えるのではないかと激しく危惧している。
つまり工業力で競争するしか武器が残っていなかった(まぁそれすら錯覚だったわけで、箱入りのサクランボが腐ってたのに今気が付いただけとも言えるが)国の、最後の武器を錆びさせる事になるのではないか。
あれも作れます、これもできますと主張していた国で、部品つくりしかやることがなくなるわけで。

完成品メーカーとしてパナソニックだ東芝だと喚き散らしていたのに、当の彼ら自身がバッテリー作ったり部品作ったりしかすることがなくなることを意味している。
ベトナム中部の中規模都市、フエにできていたイオンで、ベトナムではまだまだ染みついている日本製信仰のお値段を見に行ってみた。(現地は、雨期である。イオンに行けば濡れずに散歩できるからまぁまぁ行っていた)
洗濯機も冷蔵庫も同スペックの日本製(イオン比)より安い。輸出して得することが別にない事を意味している。
日本の家電販売店頭では中華メーカーに滅多打ちにされている。

車も輸出した先で世界中のメーカー+現地のご当地メーカーとガチンコで殴り合い。
プレイヤーの数は激増し、新興国の購買者はなかなかかつての先進国に追いつかない、つまり黒字を出すのは年々難しくなって、EVの性能では押され気味。
車メーカーもそのうちOEMくらいしかすることがなくなって縮小均衡しか見えないのではないか。

先細りのメーカー同士がHONDAと日産みたいに合併しても特に意味はない。
縮小してる最中に規模の経済がはたらくはずもなく、起こせることと言えば事務、総務コストの削減くらいしかありはしないからだ。

この新しい商品経済の時代に勝者がいるのだとしたら、それはVIN FASTみたいな地場メーカーだけであって、今まで大なるメーカー企業の成功に依存してきた先進国経済は有り様の大きな変化を模索せざるを得ないだろう。
大きな企業が小さくなって生き残ることにしか活路が見出せないのだから。

金融やITで海外に打って出る機会も最早消滅している。

今後、現状を少しでも維持するためにできる事と言えば日本では海外からの労働力輸入しかない。
バカなジジババ、中年が外国人ヒステリーを起こし続けているが、新しい消費はそこからしか生まれるはずがないからだ。
実際に人口が増えたり栄えたりしている街の成人式の映像を見た感じ、30%~50%くらいハーフや外国人の子供たちっぽい子らが参列している。

彼らの親が海を渡って日本にやってきたとき、冷蔵庫も自転車もテレビもバイクも衣料品も持ち合わせていなかったはずだ。
地道にそうした家財を買い揃えていく0からの消費を甘く見てはいけない。
日本人が国内で引っ越ししても大体の家財は揃っている、同じ消費のインパクトは起こりようがないのだ。

外国人に来てもらう。できたら夫婦や子連れで来てもらう。そして彼らに公正な給料を払う。
収入の面があっていれば住宅ローンもカーローンも組める。
子供が小学生になって、彼らの母国語はいまいち喋れなくて日本語だけ達者となればめんどくさいから帰国をあきらめるだろう、それは日本に住み着いている中国や韓国の人たちが既に証明している。

そこから子供たちが進学や就職で上京するようになるまで2-3世代はかかるはずだ。
そのマンパワーで少しの間時間稼ぎしない事には先の可能性なんて夢にも見れない時代に既に首まで引きずり込まれてしまった。

商品経済が破壊的に変貌していく中で、同じように日本人に対しての少子化対策も破壊的に変貌してしまった。
もはやいかなる少子化対策や投資を日本人にしても無意味である。

「お金がもっとあれば子供を産みたい!」
いいですね、じゃぁ自宅の写真見せてください。まさかマンションに住んだりしてないですよね?
お金があったらおたくのマンションは面積が拡張できますか。どこで育てる気なんです(実家に帰るんです)か??
現在お一人の子供が二人になったら(二親から二人の子が産まれたら)人口増えるんですか???
まさか現在30代後半で、そこから2人目3人目と目論んでますとか言わないよね????

 

「もっともっと、日本の製造業と中小企業を支援しなきゃ!」
なるほど、見上げた志ですね。
何を作って誰に売る気なんですか?
そもそも雇用するだけの人手が国内で揃うんですかね。

私たちが認知してきた世界やその公式は新しい時代のそれに変容している。
何度も何度も繰り返し、実権を握っている層の認識錯誤が何を生むか直近の記事で説明してきた
現実にBRICSが仕切る商品先物市場だってできるわけでしょ、それ俺が3年前に予告したけど専門家や為政者でそうなるって予期してた人いましたっけ?

1995年で切り替えなかったらまずかった公式と世界観は日本では2009年まで切り替えられなかった。結果はITと金融(為替)を見てのとおりである。
2007年までには切り替えておかないと取り返しがつかなかった公式と世界観は今現在も切り替わってない。
物価と人口動態をみたらその結果は明らかである。付随する商品経済などの要素も毒々しい数字をもうじき明らかにするのだろう。

いかなる言い訳を口にしたところで、俺を含めて9割の人はどこかで認識を錯誤させている。
同じ1万円を渡すときに、日本人の子供には何の違和感もなくお年玉で渡し、外国人への日当や謝礼としては払い過ぎだと思っているし、韓国や中国の人をどこか軽く見てしまっている。
(俺だってKPOPが流行ってるのは知識としてわかっているけど、真っ先に頭に浮かぶアーティストは李博士なんだから。)

飲み代交際費に15万円気楽に払う人もそれがベトナム人へのボーナスとなったら高いと感じるのではないか。

これを書いている俺だって書くことは簡単でも素で認識を切り替えられているか、それを彼ら自身に採点してもらって合格点がもらえる自信はない。
正月をとっかかりにして書くまでもなく新しい時代は既にやってきている。
どうにかこうにか脳内のOSを更新してやっていく他、我々に道はない。

 

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