コンプライアンスに案外疎いシャチョーさん達
外国人技能実習生に違法な長時間労働をさせたなどとして、岐阜労働基準監督署は22日午前、岐阜県岐南町の婦人・子供服製造会社社長の50歳の男と、岐阜市の技能実習生受け入れ事務コンサルタントの50歳の男を、最低賃金法と労働基準法(割増賃金不払いなど)に違反した疑いで逮捕した。技能実習生に対する労基法違反などでの逮捕は異例だという。
岐阜で労基法関係で逮捕というレアケースが勃発と言うんだけど、案外知らない人が多いけど、逮捕まで至らなくても労基法違反で書類送検程度ならたまには見せしめ的にやられているのを知らない人は案外多い。
「残業させたくらいで書類送検かよ」ええ、しっかり実名付きで新聞に載りますね。
仲よかった奴がマジでそうなって発狂していたのを思い出す。
ところで、そういうコンプライアンスの問題で更に驚いた話なんだけど、どこまでが法の範囲かというコンプライアンス面を知らない人はかなり多い。
特に中小零細なんか社長が資金繰りから営業、採用や事務まで全部やってる関係上、優先度が低いことに対しての知識や常識が驚くほど欠損している事例が多い。
岐阜県の場合これといって大企業もなく、県全体でどちらかと言えばしょぼい職場で同じような環境で商売しているため、研修生と一口に言っても、採用側の競争もないのと同じなんだろう。
研修生も大きい会社がある地域では、情報交換が進んでいる関係上あんまりこういう話は聞かない。
つまり、ツンボみたいな状態の経営者が集まって、似たような規模の商売でどこまで無茶をやって経費を削れるかのチキンレースが繰り広げられているのだろうし、そのチキンレースで崖に飛び出したのがこの会社だったってことだ。
安田浩一氏の著作を読んでいて「研修生に最低賃金が何の関係があるんだ?あいつら中国人だろ」と言い捨てる経営者が登場していたけど、まさにその同じ穴のムジナだったわけだ。
ロシアやフィリピン人を集めていかがわしいクラブをやってるような連中もやっぱり同じようなもんで、管理売春でパクられてライセンスが取り消しになっても「それしか能がねぇ奴に稼がせてやったんだ、法律がおかしい」とか平然と言い捨てていたりする。
コンプライアンスと同時に人として当たり前の常識を持てない人ってのは案外多いし、経営者はサイコパスが多い商売なのだ。
とにかく、他社との差別化によって競争している仕事ならともかく。
一山なんぼで人間を集めて、一日どれだけ安く生産できたかで競争する商売は、人件費のチキンレースに勝ち残った奴が勝つ。
こうなる土壌は産業の少ない地域に深く根ざしている。
(実際、この手の事件を起こしているのは田舎の何の特徴もないような会社ばっかりだ。)
安田浩一氏の著書にも登場の岐阜 零細企業のヤバ過ぎる「現場感覚」
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商工会とか倫理法人会に通ってるような連中にありがちな内輪話で、「一人前になったわけでもねぇ奴になんで給料なんか払わなくちゃいけねぇんだ」というのを聞いたことある人が多い話はあるんじゃないか。
つまりそれが「現場感覚」なわけだけど、それが「そういう地域」「そういう経営者」と「外人(特にアジア人)」に組み合わさったら無茶苦茶な人権侵害を平然とためらわずにやってしまうのが人間の恐ろしいところだ。
ナチスの精神病の患者や身体障害者、不治の病でダメになってしまった人の殺処分計画を、医療界が率先して行ったのを彷彿とさせるほど無茶苦茶をする。
「自分のお子さんやお孫さんが同じように扱われても文句はないんですよね?」と笑顔で聞きたくなるようなことを平然とする連中が↑の本に多数登場する。
冒頭の外人パブの経営者なんかが代表例だけど、まぁその他でも色々居るってことなんだろう。
どうしてこういう制度が問題を内包しつつ解決しないのか、あるいは制度を厳格化して、要件を満たせない企業を放逐できないのか?
それは時給1500円運動がいまいち成功しないことと根を一緒にしている。
是正しなきゃいけないのは法制度の前に貿易環境
つまり、今の日本の社会構造に賃金をどん底で張り付けておきたい事情があるってことだ。
例えば最低時給1500円が本当に実現したらどうなるか?
前も記事で解説したけど、どこかで誰かがババを引かないかぎり、日本の社会構造というのは絶対に維持できないのが現在の状況だ。
本件の賃金未払いの工場でも、こういう食われる中国人が居ないかぎり、他の日本人職員や経営者は生計を維持することは出来ない。
なぜなら時給を全員にまじめに払ったところで、それを売価に転嫁することは出来ないからだ。
わかりやすく言えば、最低賃金が1500円になって、物価は低めに見ても1,5倍位になるはずだ。
で、年収500万くらいの人が年収750万になるかといえばそれは絶対にならない。
この子供服製造会社の売価が1,5倍になっても、海外から送られてくる廉価製品の値段はびた一文変わらないだろう。
関税障壁のない製品が増えた市場で、一定数の労働者は海外の貧民窟で働いてるような人々と必ず競争を強いられる。
そうなった場合、同じような品質の似たような製品が片方が1000円、片方が1500円とかになってしまうわけで、この岐阜の零細企業は即死することがはじめからわかりきってるわけだ。
彼らが競争している殆どの大手企業は、海外に大規模な製造工場を設けて、下手したらここの研修生より安い給料で働いてもらっているはずだ。
機械設備の効率で勝てない、作業能率もそれ以下の会社が「生産性」を上げようとしたら方法は一つしかない。
よく「生産効率」なんて口にする労働者や労働問題の研究者がいるけど、生産効率ならここ40年ほど飛躍的な進歩を続けてきて、結果的に今の社会が登場した。
もちろん自然淘汰でこの子供服製造会社が倒産しても良いのだろうけど、厄介なことに現代の社会状況では同じ会社がすぐ起業されるという可能性が極端に低くなっている。
同じように5000万、無条件で起業資金をご融資しますと言われて、わざわざ鉄工所や土建屋、縫製工場を起業しようという人がいるだろうか?
そこら辺を理解した上で問題を観察しないと、ただただ感情的にブラック企業の被害者として喚き続ける壊れたカカシのようになってしまう。
つまり、給与や制度をどれだけ変えたところで、外からいくらでも廉価な製品を貿易できる現在、それはざるで水を汲むのと同じような不毛な努力なのだ。
雇用によって同じようなシナジーが発生する商売の競争環境は劇的に変化した。
ワタミが100円ハンバーガーや300円の牛丼と何処かで勝負する状況で、労働者がどういう目にあうかは見え透いているし、それが理解できないまま被害をどれほど喚いても状況は一向に解決しないだろうってことだ。
日本は長年来、法人に完全に政経が依存してきた。
大概の国では「労働者を競争から保護する」という政治的スローガンを打ち出す一方で、日本では「競争で企業を有利にするために労働法を変える」がスローガンだった。
研修生にせよ、最低賃金問題にせよ、ブラック企業問題にせよ視点を少し変えたほうが良いと思う。
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