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2020年代の資本主義と文明 ルネッサンスのその後がやってきた

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ついにカタストロフィが始まった

 

今日のニュースを見てついに少なくない人が気が付き始めたと思ったのでこの記事を書いているのだけど、この記事を読むにあたって最低限以下の記事

くらいは読んで何が書いてあるか理解できるようになってからというのをリアクションの条件とさせてもらう。
バカのために使う時間等ないからで、わからなかった奴(バカ)は身の程をわきまえて漫画でも読んでろってことでシクヨロ。

さて、この記事を書いている2022年の6月にスケールメリットが崩壊する時代が始まったと書いていたのだけど、どうやら同10月20日のブルームバーグの記事によればかなり過激な形でそれは我々に可視化されることになった。

LBOからレバレッジ消える、PE投資会社が現金に依存-金利高騰で
bloomberg
ウォール街のプライベートエクイティー(PE、未公開株)投資会社は、債務に依存した企業の乗っ取り屋として長く非難されてきた。だが借り入れコストが急上昇する中、今はディール成立に向け異例の手法に頼っている。レバレッジド・バイアウト(LBO)においてレバレッジを排除しているのだ。

フランシスコ・パートナーズやトーマ・ブラボー、ストーンピーク・パートナーズなどはここ数週間に、借り入れによる資金調達を行わない形での新たな買収を発表した。自社のファンドの手元資金で買収額全体を事実上賄う格好だ。買収額は20億ドル(約3000億円)を超える例もある。

このような動きは一時的となる可能性があるものの、レバレッジを活用し、リターン拡大に向け常により独創的手段を追い求めることで知られる同業界にとっては劇的な転向だ。

こうしたPE投資会社の一部は銀行やプライベートクレジット会社と融資について協議したが、最終的には提示された条件が魅力的でないと判断した。事情を知る複数の関係者が匿名を条件に明らかにした。

ルネッサンスから大航海時代が始まりルネッサンスが大航海時代とともに終わったのとほぼ同じ、史の巨大な節目の目撃者に私達はなりつつある。

果たして一体何が起きつつあるのか?
このニュースの意味を掘り下げていきたい。

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LBOを自己資金でやる意味

 

このニュースは実際問題今の西側世界、というか資本主義と不可分の文明と経済にとって相当に危機的な状況を告げるものすごく不吉なものだ。
LBOとM&Aは信用経済の中でもかなり上流に位置する最も収益力の高いビジネスと言っても過言ではないし、成り立ちそのものが現代の資本主義の根幹をなしている。

起業する 後継する 増資する 倒産する廃業する(整理する) などの経済行為の中で最も成功する(多数が儲かる)確率が高いのは合併と買収である。
カルチャーの違い、人材の質の違いなどいろいろな差異はあれど目に見える数字とコストは統合され、売上は足し算で増大しコストは重複分野を消し込み限界利益率は向上し政治力は上がることがほとんど確実だからである。
手数料やアドバイザリーの名目で関係者には融資を受けた資金やストックオプションで報酬は確実にデリバリーされて、貸し手には固い担保と大きなお付き合いが発生する、機関の収益の柱でもあるのだ。

WINDOWS95登場以降の世界では合併と買収こそが市場の主要テーマだったことに気が付かない人は少ないだろう。
(気が付かない?バカは黙ってろよ。お前を対象にした記事ではない。)
もっと言えば1900年代通じて大きなディールが市場を賑わせてきたことはジレットの社史からでも明らかな話で、ジレットのそれは2005年のP&Gによる合併で閉じている。

これはつまり例えばアメリカのウォール街や日本の銀行、証券会社などの花形部門、精鋭人材の大量の雇用を生んできた資本主義の推進エンジンの主要シリンダーくらいの役割を担っていた部分で、投資家と銀行の大きな収益源であり合併で空いたスペースと動いた金などのこぼれ落ちた副産物が常に産業を刺激してきたのである。

時代を追うにつれ信用が金を膨らまし金が信用をまた膨張させてサイクルが高速化し、技術開発と富の膨張が先進国経済を牽引してきた。
例えばLBOで言えば2000億の買収に買収先企業の純資産を担保にして金を借りて、例えばそれが1500億あったら頭金200億と自己資金300億入れて手持ち資金500億で2000億の富を手にすることができていた。
そして目に見える数字とコストは統合され、売上は足し算で増大しコストは重複分野を消し込み限界利益率は向上し政治力は上がり、空いた隙間は誰かが起業して埋めてまた新たな富がそこにできていたのだ。

また、証券市場で例示すれば、市場創設以来長い年月を経てまだ市場はコード数の不足や企業上場数の過多に悩む羽目になっていない。
適度な統廃合が起きて全体の時価総額は増大して、空いた席の分程度の上場申請しかなかったからで、仮に合併や統合、買収というものがなかったとしたのなら先進国の大概の国では上場企業がひたすら増え続け、IPOという行為すら意味喪失するのではないのかという単純な疑問をどう処理するのか悩む羽目になっていたことだろう。

私達が追い求めている金の増大というのは基本的に殆どがそうした仕組みで起きている。
そしてそれがまともに回転しなくなり始めたのだ。

そして現実を白日のもとに晒してしまった。
私達が当然のように盲信していた経済成長とは、実際の所一年に10%も成長が期待できない世界の中で無限の拡大を闇雲に信じ込んでいた長屋の花見であったことを。
(「実際問題UBERとやらがどんだけ時価総額が有ったって金利が10%だったら起業するまでもないようなビジネスだよね、実は」と非常に雄弁に金が指摘しているのである。)

実際に期待値が優に10%を超えていたら金利が10%でも金は借りれていただろう。
期待値が10%を超えたように見えていてもそれは単に印刷機が回転しただけの話で1が1.1になったわけじゃないってことに薄々気が付き始めたのだ。

今回人類は歴史上初の形態の恐慌の入り口に立ち、実に奇妙な経験をするであろうことを予告しておく。

 

私達が知っていた資本主義

 

私達が今まで政治とも経済プラットホームともつかないまま使ってきた資本主義というシステム。
これについて一言で端的に言い表すならそれは拡大という用語の哲学的な表現であり、哲学的な表現である資本というわずか二文字を因数分解した結果実に様々な機能が飛び出して社会を設計してきたパンドラの箱だった。

この資本主義がどうやって今まで機能してきたのか?
私達が現段階で認識している資本主義というのは、エンジンと燃料の不可分な組み合わせと同じように、拡大と不可分に組み合わされていた。

ルネッサンス時代に西欧とイスラム世界との交流が発展し、文化的な刺激を伴い世界は東欧や北欧までも巻き込み拡大し、富が溢れ始めた結果航海への投資が起こった。
そして再びアジアや新大陸に向けて世界が拡大し、富も世界も資本も何もかもがこれでもかというくらい拡大した。
そして新たな海新たな大地の発見が止まり始めた頃にそれは終わりを告げた。

領土的な拡大や見たこともない物の貿易などといった拡大は終わりを告げ、それはやがて帝国植民地主義を惹起して、今の資本主義の原型になる商品や企業による(時価総額の拡大とか価値の創造と言われるような形態に類似した)富の拡大の時代へと転換していくのだ。
(我々が生きてきた20世紀の半ば以降~人類はこれといって新大陸発見的な出来事に到達することもなく、基本的に観念的な拡大を富の増大の根幹に据えてきた。)

そして上述の通り信用が金を膨らまし金が信用をまた膨張させてサイクルが高速化し、技術開発と富の膨張が先進国経済を牽引してきた。
他の記事で書いていたスケールメリットも拡大の一類型であるし、拡大は資本主義の根幹不可分なものであると同時に、20世紀と21世紀冒頭の文明や暮らしを支えてきたのはスケールメリットだった。
これが私達がよく知っている資本主義の今までの姿である。

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