日本橋ヨヲコという作家はひたすらアツい。たまにエロかったりもするが、むせっ返るような青春の匂いとか臭いを正面から描く姿勢は、早くから評価されてきた。
上記は「G戦場ヘブンズドア」の1ページ。「一緒に汚れてやる」とか、まず滅多にお目にかかれないセリフで1ページまるまる使っている。ここだけ見ると気恥ずかしくて仕方ないのだが、常にこういうテンションなので、実際に読んだときにはあまり抵抗がない。
これもやはり「G戦場ヘブンズドア」の1シーン。「誰も生き急げなんて言ってくれない」というのは、個人的に好きなセリフではあるが、実生活ではまず使わない。マンガ家を目指す高校生に雑誌編集者が語りかけるシーンなのだが、こういうオッサンがいたら殴ってしまうかもしれない。それぐらい気恥ずかしい。
「プラスチック解体高校」「極東学園天国」といった他の作品もこうしたセリフが山のようにある。文字にすると気恥ずかしいのは確かだが、実際に読んでみるとヨゴレヲタの私でも何か感銘を受けてしまうから不思議だ。ひたすらにアツい世界観にハマってしまう。
長らく週刊ヤングマガジンを発表の場としてきた日本橋ヨヲコがイブニングに場を移したのが「少女ファイト」。女子バレーを主題としているが、そのアツさには変わりないが、しかしエンターテインメントとして十分に円熟している。
絵柄がなじまない方も多いと思うが、これは読み進めるうちに気にならなくなる。絵としてだけ評価しても基礎技術のレベルが非常に高い。当初隔週連載だったものが(おそらくは人気のせいか)2014年から週刊連載になった当初は「このレベルで毎週描けるものだろうか」と心配になったものだが、杞憂に終わったというかまったく質を落とさずに連載が続いている。
肝心の内容も期待以上のもので、よく練られたプロット、アツいセリフはいささかも衰えることがない。
イブニングというのは、正直マイナーな雑誌なのだが連載中にファンを増やし、また早い時期からバレー用品メーカーであるMoltenからの寄贈や協力を受けるといった社会的評価も得ている。ちなみにMIKASAとのコラボレーションとしてスポーツバッグも発売されていたが、ぼやぼやしているウチに入手不可となってしまった。
さて、日本橋ヨヲコの魅力はそのアツさだけではない。一歩間違える、いや間違いのない厨二病テイストもそのひとつだ。
登場人物のひとりはお約束のように学園理事長の娘だし、主人公は当然暗い過去を持っている。それ以外の登場人物もヤクザの孫だったり女優とマンガ家の娘だったり、複雑な家庭環境の持ち主ばかりだ。部室にはどデカい円卓が設置されているし、直感映像記憶資質の持ち主も登場するし、そのうち超能力者とか未来人が出てくるような印象すらある。
ほかにも賭けバレーが出てきたり、高校一年生が全日本の強化合宿に招聘されたり「ねえよ、普通」といった話がちょくちょく出てくる。作者自身もそういったテイストが好きなようで、最新12巻では「ダンガンロンパ」を模したというか、はっきりコラボしたようなチームが登場する。
ちなみに女子高校バレーのチームだ。髪型とかマスクはマンガだからいいとして、「その筋肉は校則違反じゃないのか?」という女子高生が混じっている。シリアスな展開が売りなのに、これはちょっとヒドい。
しかし、面白いのだ。
関西人からツッコまれることを期待しているような舞台設定と登場人物、出来すぎと感じられなくもない筋立てが、日本橋ヨヲコの手にかかるとひたすらにアツい青春群像劇となってしまう。その多くが堅実な画力と特徴的なセリフ回しに多くを依拠していることは論を待たないが、いい年したオッサンが「付録が欲しいから電子書籍版と別に特装版を買おう」と予約してしまうぐらいには面白い。そしてアツい。
連載10年、第一話からひたすら飛ばして最新刊が12巻。一話たりともダレずに疾走を続ける本作。万人に推奨するとまでは言わないが、一巻、いや一話だけでも読むことを強く推奨する。情熱と憔悴、渇望と絶望をあますところなく描こうとする作者の試みは、読者の心臓をダイレクトに刺激するだろう。
40代、筋金入りのアニメオタク、独身。
自暴自棄なリビドーを駄作にぶつけ痛罵痛飲する毎日
人の保守(ホモ)、普通の日本人が図鑑に登録されました。