狂気のオタクは実在した。表現規制を助長するオタクの奇行。

アニメ、コミック規制の必要性

唐突な話で恐縮だが、筆者はアニメ、コミックに対する規制についてはやや賛成派だ。

表現の自由という言葉は重みのあるものと解してはいるが、やはり何らかの規制・自主規制は必要であると考えている。

感情としてのゾーニング

中年といっていい年齢なので同僚に中学生の娘さんがいたりすると「やっぱりこういう子が拉致されてひぎぃらめぇされるマンガとか良くないかもしれない」と思うようになったのが理由のひとつ。

コンビニとか行くとさあ、中学生とか小学生くらいの女の子が大開脚してるエロマンガ雑誌とか置いてるんだよ。それを見た同僚がちょっと顔をゆがめたりするんだよね。そういう人に「いや、これは被害者がいない絵なんですよ」とか言う根性は、私にはない。

例えば、BPOに「深夜アニメで高校生キャラの濃厚なキスシーンがあった。子供が観たらどうするんだ。」という投書があったとして「そんな時間に子供が起きている家庭に問題があるわ。」と言い返すことは出来ても、子を持つ親に対して「児童ポルノの定義とはそもそも〜」という講義を押し付けることは出来ない。

広義の社会制度や法は理性的であるべきだが「何かイヤ」という感情は「これが好き」という感情と同様に尊重されるべきで、「表現の自由」を無制限に拡張することは厳に慎むべきだろう。

こういうことを言うと「検閲を認めるのか」とか「ポルノと性犯罪に因果関係はないのに非論理的だ」とか、あげく「警察の天下り構造とか利権の手先め！」と顔を真っ赤にして汗だくで反論されるのだが、どうしてそんなに極端なのか逆に心配になる。

事前の検閲を提案するつもりもないし、ポルノと性犯罪に（因果関係ではなく）相関関係が立証されていないことも承知している。ロリコンでもスカトロでも、性癖や表現が存在することに異議はないが、TSUTAYAの18禁コーナー程度のゾーニングをすればどうかというだけの話だ。

感情の問題として、犬好きの人は犬が虐待される映像を好まないしトランプ相場で大損した人は最近の株価にのってこない。

それと同様に、子を持つ親は少女が誘拐される表現を好まないし痴漢に遭った経験を持つ人は電車内でレイプされるような話を遠ざけたいと考える。思いやりというにはあまりに希薄な気遣いだと思うのだが、それを認めることが出来ない人達もなぜか存在する。

極端に走り、罵倒合戦に終始する規制推進派と規制反対派

二次元か実写かという区別を置いといて、表現規制の叩き台と目される自民党の青少年健全育成基本法案を見てみよう。この法案は具体的な内容を伴わない理念法の一種で

• 所管大臣がある業界では有害環境からの青少年保護に関する指針と策定し、業界は自主規制としてそれを尊重する
• 地方公共団体はそのために青少年健全育成支援センターを置くことが出来る

衆議院公式サイト：青少年健全育成基本法案

ということを骨子としている。一般には、ほぼ死法と化している地方青少年問題協議会法の代替として、具体的な組織構成や施策を推進するものと解するのが順当なところであろう。

しかし、無駄に行間を読んで誤読を重ねたがる者は少なからず存在し、天下りがどうの検閲の可能性がどうのと騒ぎたてて話を大きくする。

児ポ法のときにも同様のことが起きたが、一議員の見解や言葉尻を捉えてそれが「政府の隠された謀り事」であるとか「全体主義の到来」のように騒ぎたてる姿は浅ましいの一言につきる。たぶん、国語の試験で勝手に作者の気持ちを考えて減点されるタイプだ。

推進派にしても同様で「こんなエログロなマンガを子供に読ませないためには法案成立が必要」とか意味不明のことを主張する。読ませたくないなら出版社かマンガ家に要求するのが本当なのに、どこまでもお上に頼る姿は醜悪で、むしろこいつらの方が青少年の教育を阻害している印象を禁じ得ない。

外野で極論を主張する哀れな人たち

そもそもエロ本というのはスッキリするためのツールであってムラムラするためのものではない。性表現そのものが性犯罪を助長する証左もないし、逆に性犯罪を抑制するという証左も存在しない。

性表現と性犯罪とは別個の問題として、児童ポルノは題材となった少年少女が被害者と想定されるし、CGやイラストにおいても本人到達性の高いものは同等の扱いを受けることが法理にかなっていると考えられるだろう。

また、過度の性描写、暴力的な表現は公序良俗に反すると考えられるため、行政ではなく業界団体においてゾーニング等の自主規制を行ない、実施することが望ましい。

以上が私の私見である。要するに「エロを必要とする人もいるが、忌避したい人もいる」という当たり前のことを言っているに過ぎない。

東京都青少年健全育成審議会のように発足当初は極論が問題となった諮問機関も存在するが、ここ2年ほどの動向をみると基準は落ち着いており、むやみに不健全図書指定をする傾向もなくなっているように思える。

筆者は2015年以降に取り上げられた図書類を可能な限り入手・閲覧するようにしているが、むしろ「どうして全年齢対象として出版しようとしたのか？」というものが大半を占めていた。

一部の近親相姦もの、人妻ものについては「そんなに過激かなあ？」と思うこともあったが、ちょっと気持ち悪い説明が多かったので保守的な人の嫌気を受けたのかもしれない。ちなみに、近親相姦ものも人妻ものも18禁指定されていない本は大量にある。

余談ではあるが、不健全図書指定を免れたもののうち「絵が稚拙でシチュエーションも大雑把。青少年の劣情を喚起するとは思えない（要するにエロくない、抜けない）」という意見が多数だったものがあって、少し作者に同情した。

外野があれこれの極論をネット上に垂れ流しているのとは関係なく、世間はわりと常識的に制度運用を行っている。

「あんまりエロかったグロかったりするものは好きではない」「それはごもっとも。じゃあ、年齢制限とか流通経路を限定して本当に欲しがる人には入手出来るようにしましょう。」というわけだ。タバコの煙が苦手な人のために禁煙席や喫煙ブースを設けることと何か違いがあるだろうか。

例えばの話「どうしても9歳の少女でないと抜けない」というロリコンが「フラッと立ち寄ったコンビニで少女が拉致監禁されるマンガが入手出来ないのはオレの人権を侵害している」と主張しているだろうか。

自民党の代議士が「エロ表現はけしからんから全部禁止！買うヤツも売るヤツも、作るヤツも死刑にして当然！」と答弁したことがあるだろうか。

そうした事実を私は寡聞にして知らないし、過激な意見を撒き散らしているのは決定権もなく意見を聞かれることもない外野ばかりのように見受けられる。冷静に行政や国会運営を見ていれば彼等の主張はどちらも平等に頭が悪く、自己主張に終始している。

規制推進派については多くを知らないが、反対派については非常に視野の狭い団塊ジュニア層が多いように見受けられる。いや、団塊ジュニアという言葉は不適切かもしれない。「オタクは虐げられて不遇をかこっている」と思いこんだ個々人が偏見を助長し、一般の理解を大きく妨げているというのが正確だろう。

沙門アニメ君

40代、筋金入りのアニメオタク、独身。
自暴自棄なリビドーを駄作にぶつけ痛罵痛飲する毎日