ロボと競争する時代になった日本人
日本の相対的貧困率(平均的な可処分所得の半分以下の収入しかない層に所属する人の割合)はバブルが崩壊した1990年代から上昇し、「一億総中流」と言われた時代は遠い昔となりました。
それに伴い、ホームレスやネットカフェ難民、路上売春や出会い系サイトを利用した売春を行う女性も増加していると言われています。
【日本の相対的貧困率の推移】
実際、厚生労働省が2014年7月に発表した「平成 25 年国民生活基礎調査」によると、2012年の相対的貧困率は16.1%(6人に1人)と過去最悪で、子供の貧困率も16.3%にまで上がっています。「大人が一人」(主にシングルマザー)の世帯では、半数を超える54.6%が、「大人が二人以上」の世帯員でも12.4%が相対的貧困に陥っています。
今現在日本人の心理の中で最も大きな感情とは「割にあわない」というものが挙げられると思う。
働いても豊かになれない、金が儲からない、生活が苦しい。
どういう美辞麗句で取り繕っても経済指数は冷酷に厳しさを示しており、厳しい財政は先行きの不透明さを煽り立てる。
何故そうなっているのか?
政治が経済判断の指標に使っているGDPが明白にそれを示している。
どうして日本人は貧乏になったのか?
それはロボットとの競争を始めたからであって、ロボット以上の雇用価値が発生しないすべての人々の価値は暴落した。
ロボットと人間が職場の同僚になった時代
↑は日産の自動車製造工場の製造現場を動画にしてアップロードしていたものだけど、現在日本の津々浦々は、あまり意識してない人が多いにせよロボットとコンピューターが行き渡った。
郵便配達員は携帯端末とバーコードで郵便物を捌き、自動車は動画の通り製造の多くの工程をロボットが担当している。
家に帰ればパソコンが有り、今まで専門家に質問しに行ったり図書館に調べに行っていた情報が瞬時に調査でき、休日に車屋巡りをしていた光景は消えて自動車ポータルで価格を比較する時代になった。
身近に居た人間はロボットに交代した。時代を一言で言い表せばそうなる。
そして人間とロボットが価格競争を開始した
この動画を見れば人間が自動車塗装の仕上げ工程をしていて、一般的にはこういう職人技の工程をモノヅクリや日本の技術と言い賞賛する傾向にある。
昔はロケットの先端部分の曲げ加工なども同じように賞賛していた。
しかし現代において先進国の多くの国民を苦しめている原因はまさにこの部分であって、何故これを原因にして苦しむのか考えてほしいと思う。
考える時間
考える時間
考える時間
ロケットの先端部分の曲げ加工というものを何故職人に依頼していたかというと、早い話が大量生産するわけでもないロケットの先端部分を作るための工作ロボットを開発するより、職人に頼んだほうが安上がりだからに過ぎない。
あの当時社会に流布されていたコンセンサスが「日本の職人が居ないとロケットが飛ばない」というものだったけど、その部分を掘り下げて考えて見ればすぐに分かることだ。
世界中で何万発、何十万発と配備されているミサイルは、全てがロケットと同類の構造を持って同じような飛行形態を示す。
その一個一個を日本の職人は曲げ加工しただろうか?
どう考えてもやってない。
つまり大量生産するものはロボットを開発してもペイするけど、大して数量の出ない部分は人間にやらせたほうが目先安上がりだからやらせていた、これが正解の認識で、自分の人生の幸福度を高める判断指標だ。
非常に口幅ったいけど、水研ぎ加工という仕上げ作業も、同じ作業がコンスタントに毎年1万台に発生するなら日産は必ずそれ専用のロボットを開発して人間をお払い箱にするだろう。
現実に銀行で業務がこの30年でどう変わっただろうか?
昔は人間が全業務を行っていたものが、大半がATMに取って代わられて、今はその使い方がわからない年寄り向けの最もストレスが高い仕事をパートの従業員や、リストラ候補者が担当する時代になった。
今まで居た彼らはどこに行ったのだろうか?
このロボット以下の付加価値の仕事を、時給制の給料で容姿端麗かどうかを審査されながら人間が面接されている。
価値が人間より高くなったロボット達
この2つの動画は、ロボット工学の研究者組織で研究しているヒューマノイドと、福島第一原発での作業の模様をそれぞれ映像にしたものだ。
現在の先進国に住むこれと言って職業上の技能がない人の苦悩をこれらの動画が端的に表している。
これはつまり上述までのロボットと人間の価格競争の最もわかりやすい事例で、ロボットが歌い踊るための投資を国が行って、歌った踊ったと喜んでいる一方、親や親族に出生を待ち望まれて生まれてきた人間たちが、放射能にさらされながら原発で作業している。
繰り返すけどこれが不幸の根源だ。
常識で考えて欲しい。ロボットを歌って踊らせるためじゃなくて、原発で困っている人間の代わりに作業させようとするほうが先じゃないのか。
歌って踊れるロボットが多額の年収の研究者に囲まれ潤沢な予算の投資を受ける一方、原発作業員が体を壊して倒れても、生活保護は月に20万にもならない。
これと同じような構図が経済全体に浸透し始めて、なお日本では産業構造がそれに支えられているがゆえに厳しい貧困や閉塞感になって国民の圧倒的多数を圧迫している。
悲惨なことに今勃興期にある中国やインド、つまりBRICSの諸国と違って、成熟の極みにその体制転換を迎えたのが日本とアメリカであって、製造から足を洗ったアメリカと違って製造にしがみついている日本では今後もこの状況はますます厳しくなる。
GDPで見る世界幸福ランキング
世界の名目GDPランキング
世界の一人当たりの名目GDPランキング
このGDPのランキングというのがロボットの社会的地位を示している。
つまりこういうことだ。国としてのGDPが高いのに個人としてのGDPが低いということは、基本的に労働の価値を頭から否定されているか、他の何かに奪われていることを示している。
※ただしこの方式で俯瞰できるのは、生活様式や居住場所が発展し終えた先進国限定。
中国の場合はまだ所得平均が日本人の4分の1くらいで、しかも人口は14倍だ。
つまり日本の倍の乖離が生じても負担は7分の1で済んでいると見るべきだし、そもそもまだ所得の平均値は4分の1かそこら。
先行きに明るい希望を持ってる間は閉塞感は発生しないだろう。
画像のリンク先を覗けばわかるけど、国別GDPで上位に来てる国の中に入っていない国が、一人あたりGDP比較の上位に食い込んでいる。
このギャップこそが待遇の悪さの理由、つまり産業構造の無理を示唆している。
更にこうした統計はその実態を克明に現している。
世界の一人当たりの購買力平価GDPランキング
ロボットと遜色ないほどの労働を要求されて、なおかつロボット以下の給料を提示されて、危険作業・汚れ仕事に従事した結果、台湾以下韓国以上の購買力しか得られなかったのが日本の実情だ。
上位の国々を見て一目瞭然である通り、モノヅクリに固執した結果発狂しそうな結果が出てきている。
国別GDPと一人あたりGDPで後者が劣後する乖離が生じた場合、比例して幸福指数が下がっていくということがこれ以上露骨に出ているデータはないだろう。
この中で注目しなければいけないのは、上位陣の産業構造だ。
ほとんどが投資金融に軸足を移し、その結果国民に無理のしわ寄せが行かない体制を実現している。
ほとんどの勤労者は口を開けば「欧米では~」というけど、欧米で勤労者が頭を必死で使って投資金融・科学技術の開発を行い、高い納税額で福祉国家を実現している一方、日本ではロボット労働と低い税率、結果として韓国すれすれの成果しか出せなかったのが現実であって、欧米と比較しようにもロボットと金融は比較にならないのではないかという悲惨な状況が浮き彫りになった。
本当に進歩したのか日本人
1980年からの購買力推移 6カ国比較
※日米中英豪、ルクセンブルク6カ国で比較
一見するとそれでも昔よりましになったというけど本当にそうだろうか?
みんなが感じている不満というのを一言で説明すれば、娯楽の余裕があるかないか、だ。
統計の開始地点1980年の日本人の大卒初任給はおよそ10万円くらいだった。
タバコの値段がハイライトが120円、コーヒーの値段が東京で一杯300円(田舎は3割引きくらい)、うどんが280円(田舎は200円弱)そこらだ。
2013年の現在どうだろうか。
大卒初任給が21万円弱。高卒が16万強。
ハイライトが420円、うどんがセルフじゃない店で食えば700円そこそこ、コーヒーが上野の駅前の昔ながらの喫茶店で頼んだら900円ちょっとだった。
この中で娯楽に相当する部分はタバコとコーヒーになるんじゃないかと思うけど、要するに物価が3倍強になったのに給料は2倍ほどにしかならなかった。
みんなが感じている不満はまさにそこに端を発しており、ついでに言えばその差額をロボットと公共施設が奪っているといえる。
当時の時代からの差をかいつまんで言えば、
・将来へ希望を持ちにくい閉塞した時代になった
・娯楽が高くなり、食べていくのはなんとかなるだけの時代になった
・昔は割高な金で募集するしかなかった仕事はロボットに任せておける時代になり、人間の価値は下がった
つまりこういうことだろう。
本当にアベノミクスでいいのか?
政治と現実のミスマッチは解散総選挙を訴える安部総理のアベノミクスに集約されていると言ってもいいだろう。
今までの著述で指摘したのは、人間の仕事をロボットに譲り渡す代わりにもっと高度な仕事にシフトしなければ幸せになれないという現実だ。
にも関わらず円安路線はモノヅクリで中国やインドと競争する計画を露わにしているもので、もっとロボットと競争しろと国民にハッパをかけているのと変わらない。
しかもアベノミクスで刺激するのが株価と為替という金融の権化にもかかわらず、その結果でモノヅクリの効率を上げたりモノヅクリに従事する人の給料をあげようという非常に無謀な内容だ。
つまりこういうことだ。
国家予算で並べてみれば、インドは2013年で10億人の人口に対して24兆円の連邦支出を決定していた。国民一人あたりに対して2万4千円の支出の国。
中国が総額で14億の国民に170兆円の支出。一人頭に直して12万ちょっとの支出。
日本が総額で96兆円の予算、一人頭に直して96万円の支出。(特別会計含まず。入れたらもっと悲惨な数値になる)
これは国としてまじめに競争する気であれば、国民の生活が40分の1とか8分の1位になってやっとまともに中国とかインドと競争できるという現実を示唆しているもので、ひょっとしたらモノヅクリと職人に取り憑かれていつまででもアベノミクスなんかやっていたら日本人は地獄に落ちるかもしれないという非常にドライな未来を示唆している。
一体日本人はどうすればいいんだろうか?
陰謀論抜き。シンプルでラディカルな要求を
今のところ政治的に意見を述べている日本人の99%が失敗しているのがここで(これは別な機会に記事にしようと思っている)、財務省がどうとか、ユダヤがどうとか陰謀論を喚き始めたり、プライドだ名誉だとくだらない妄想を開陳したり、その全ての人がこうした数字から見えてくる現実から逃げているせいで対処しなければいけない未来に背を向けてしまった。
政治に要求する、あるいは反対意見を提示するというのは、陰謀論とか個人の心情としての政治思想を抜きにして、現実的な打算に基づいていなければならないし、反対を主張するのであればやはり数字に裏付けされていなければならない。
ユダヤの陰謀を感じるからといって反対したって駄目だし、職人の意地があるからといって要求したって結果はろくな事にならない。
では日本人は政治に何を求めればいいのか?
至ってシンプルな話で、もうモノヅクリなんか中国とかインドに任せとけよって話以外何者でもないだろう。
ちょっとは頭を使ってまじめに考えて欲しい。
国民一人頭12万とか2万4千円で維持できるインフラしか持ってない国が、日本人でも買ってしまうような格安製品を作る時代に、なんで一人頭96万円のコストがかかる国が同じ商売で競争するというのか?
結果なんか始まる前から見えているわけで、要求して勝ち取らなきゃいけないのは「どうでもいいモノヅクリから脱却した高度な仕事」だ。
昔日本が電化製品市場などで勝ち上がり始めた時に、GEなどアメリカの電機関係は金融や重電に経営を方向転換して競争をあっさりやめてしまった。
なぜなら競争という行為は利益をもたらさないからだ。
あれだけ必死で国が応援してきたアメリカの自動車会社は、競争して何とか生き残って今までに利益を出しただろうか?
出さなかったからチャプター11を申請したんじゃないだろうか?
つまり独占時代に儲けた金を競争で生き残るために全部吐き出してしまった。
利益を出すために企業を組織したのか生き残るために組織したのか、基本的な部分がワケわからない状態になってしまった。
商売で利益を出してみんなを幸せに出来る時というのは必ず市場を独占している。例外はない。
日本だって莫大な利益をあげていた当時市場をほぼ独占していた。
あれは競争で勝利して利益を上げたのではなくて、早々にアメリカ企業が競争を諦めたから上がった利益であって、あの時アメリカが焦土作戦を行っていつまでもモノヅクリに固執していたらあんな利益はとても上がらなかった。
それが現実だ。
日本は今から次に独占する産業を探さなければならない。
そのためには国民、経団連などが冷静になって、「利益を上げるための行動方針」をまじめに考えなければならない。
麻生太郎さんを筆頭に実業出身の政治家はたくさん居る。
しかし各々のプロフィールをよく身て欲しい。
政治家でビジネスマンとしても成功している人は、渡邉美樹さんと松田公太さんくらいなもんだろう。
他の人のビジネスの成績はどうだったか?
つまり政治家は商売に向いてない。あの人達に商売の方針まで任せているからいつまでたってもダメなまま。
20年30年かけて証明されたこの事実もいい加減で日本人は受け入れなければならない。
政治家の商売上手だった田中角栄はとっくの昔に鬼籍に入った。
それ以降政権についた商売人上がりの政治家の、肝心の商売の成績がどうだったか俯瞰すればアホでもわかる事実がある。
国民だって各々の縄張りのプロとして政治家に意見すべきだ。
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義務教育で学び損なったらどこまで悲惨な人間に育つか?
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日本が売れるものといえばバイオテクノロジーだと思います。
山中教授の努力の成果もありますが、それ以上にキリスト教的制約がない分欧米より自由な研究開発ができるので、世界において独占的地位に立てるはずです。生きている間に攻殻機動隊の時代が来てくれたらうれしいですね。